夏〜日本海鳥海・日照残照


海面ギラリを狙ってこの場所に来たものの、雲のいたずらでそれはなしに。
それでもわざわざ吹浦から40分かけて歩いてきた手前、そうやすやすと引き下がれない。
暫くこの地にいてみると、ほんのわずかな残照と、色合いの変わった海が。
一縷の望みを託して“いなほ”を待つ。
トワイライト・タイム。
この後急速に、辺りが暗くなっていった。

吹浦−女鹿間にて  2004-8
CanonEOS-3 EF28-105mmF3.5-4.5 USM  1/15sec f5.0  RVP(+1)



冬場はあれだけ鉛色の日本海も、
夏になると美しいまでの真っ青になる。
その青さは、海水がまだまだきれいだというのも
大いに作用している筈だ。

羽越と日本海を眼下に望む山腹に立つ。
夏の多客期、特急“白鳥”は、堂々の11連でやってきた。
大阪−青森1,040km。
昼行特急としては日本最長の走行距離を誇りに、
長年走り続けてきた。

2000年夏。
これが、“白鳥”にとって最後の夏となった。
それを知ってか知らずか。
最後の夏を眩しいまでの青さで、
海自身がはなむけになってくれた。




小岩川−あつみ温泉間にて  2000-8
CanonEOS-3 EF70-200mmF2.8L USM+EXTENDER×2
1/250sec f8.0  RDPIII



三瀬から羽前水沢に降りる折、ちょっとした山越え風の趣を醸す。
少々狭苦しい感じの車窓が急に、「パーッ」と解き放たれるように変化を見せる。
磐越西線を新津からずっと行くと喜多方手前で広大な盆地が目に入るが、それとよく似た印象である。
ただ、庄内は盆地ではなく平野。規模はもっと大きい。
この辺りが、海〜山と平野のちょうど境目。
ひたすら広がる田圃に稲穂が実り、いかにも米どころにやってきたという印象だ。
海あり山あり田圃あり。羽越は斯くも、面白い。

三瀬−羽前水沢間にて  2001-8
CanonEOS-3 EF70-200mmF2.8L USM  1/1000sec f4.5  RDPIII


数日にわたった羽越行脚も、そろそろ帰京の列車の時間。
駅前の喫茶店で、撮影で疲れた体をゆっくり休めて、ホームへ向かう。
帰るのはかなり心残りなのだが、致し方ない。
象潟駅の階段を下りようとしたその時、思わずこんな光景が目に入り、暫し足が止まる。
最後の最後で、こんな光景を見せてくれる。
これだから、いつも後ろ髪を引かれる思いになるんじゃないか。
「まったく、罪なことしてくれるよ」
一度は鞄に入れたカメラだが、取り出そうと思うまでに時間はかからなかった。

象潟にて  2000-8
CanonEOS-3 EF50mmF1.4 USM  shutter=auto f2.0(Exp.Comp-2/3)  RDPIII


次へ進む

「羽越フォトグラフィ」メニューに戻る