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 帰り道

日が傾いて地に接しようかという時間は、
昼間に終わりを告げる、夕焼けという切ない色の世界。

西の方角は既に空が赤や黄色のグラデーションを成していて、
わずかに残る青い空も徐々に漆黒へと変化する。
ゆっくりと、しかしはっきりした旋律の音楽が街に流れて、
遊び疲れた子供に帰宅を促す。
かくれんぼとか缶けりだとか砂遊びだとかで楽しかった、
その日一日の友達との遊びが終わってしまう。
「じゃあね」「また明日ね」などと言いながら、
家までの道をとぼとぼ歩き始める。
空の色とゆっくりな音楽に、切ない気分にさせられた。

私は幼い頃を千葉県習志野で過ごしたが、
住んでいた家の近所には大きな空き地があって、
そこから見る空はとにかく大きく広かった。
家からは西の方角にあって、夕焼けはその空き地のほうに見える。
空き地に沿うように帰路を辿ることも多かった。
夕焼け空をたゆたう雲も日々いろんな表情を見せてくれて、
子供心に残るほどのものだった。

夕焼け空を見ると、昔日の空き地を思い出す。
あの空き地の帰り道。

大人になってからも何回か訪れたが、
幼稚園や友達の家に向かう道などとは違って、
空き地とそこの空は大きく広いままだった。
いつかまたあの時間にあの場所から、帰路を辿ってみようか…。


北陸本線 入善−泊間にて  2011年5月



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