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 写真の音

「音が聞こえる」ような写真。
感情に訴える写真としては、ある種極みのようなものかと思う。

写真から音が聞こえるとはなんだろう。
もちろん被写体から発せられる音だろうし、
何かその被写体の写り方から想像されるものかもしれない。

あるいはその映像から、鑑賞者が何か連想するようなものか。

私は鉄道というものを撮っているので、まず“写真と音”として連想するのは、
列車が走ると発せられる、あるいはその周りの音ということになる。
ジョイント音とか、踏切の音とか、汽笛とか、発車ベルとか。
そういった直接的なものもあるが、撮影するところで聞こえる音が、
心地よくそして大切なものだったりする。

線路と広がる田圃と、そして遠くに山々を望む丘に立つ。
間もなく日没を迎えるところで、昼間より少しは乾いた風がそよぎ、
その風に虫の鳴き声がのる。

時間がゆっくり流れる中を、その流れに同調するかのようにカタンコトンと音をたてて、
ゆっくりと列車が現れる。

別になんでもない光景かもしれない。
が、そういうなんでもない光景の中に、
ほっとしたり安らぎを得たり、何かしらの心が動くことがある。
そういった感情はその場に立って感じるのがいいとは思うが、
映像を見てもそうした音が連想でき、また連想してもらえるとなおいい。
そうなればカメラマン冥利に尽きるというもの。
ひとつ画を成す時の、それが私にとっての目標なのである。



飯山線 替佐−蓮間にて  2017年11月



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