冬 〜 厳しい自然に、決して抗わず


折からの低気圧が雪を誘い、線路に激しく襲い掛かった。
列車は行き足伸びず、足止めを食ってしまう。
しかし、乗っている人をちゃんと目的地まで、送り届けなければならない。
そして、駅で待っている人をちゃんと、迎えなければならない。
前が見えなくても、使命を果たすためにそろりそろりと少しでも。
楽な仕事であろう筈がない、つらく厳しい冬の運行。

南鳥海−遊佐にて  2006-3
CanonEOS-1vHS EF70-200mmF2.8L USM  shutter=auto f4.5  RDPIII


これから出発の時という緊張の時に、雪が再び降り出した。
灯りをつけなければ闇に溶け込んでいた雪。
思いのほか、顔に付きまとってくる。
この2つの灯りだけが頼りの、暗夜行路。

酒田にて  2006-3
CanonEOS-1vHS EF50mmF1.4 USM  shutter=auto f1.4(Exp.Comp+2)  RDPIII(+1)



冬のある日にここを訪れた人間は、私一人だけだった。
昔日の旅人が訪れた名勝。
他の季節なら参拝客の姿もあるが、
厳しい寒さに黙っていた。

どんよりと暗く座る雲。
冷たく当たって通る風。
ざわざわと揺れる立ち木。
へばりついたように積もった白い雪。
ここに色は見つけられない。

踏切の音が鳴って列車が一瞬通り過ぎたら、
また色のない風が吹き付けた。




象潟−金浦間にて  2001-1
CanonEOS-3 EF24mmF2.8  1/80sec f=auto  RDPIII



本当は、まだ明るいうちに、この駅を出る筈だった。
大雪に阻まれ、約束の時刻を大幅に超えて、なんとかこの駅にたどり着いたのだった。
これから先は冷たい闇夜の道、さらに険しさを増す。
その道を、遅れを引きずっても、最後まで目的地を目指さなければならない。
「約束ですから」
そう言うかのように、顔にべったりはり付いた雪も払わず、彼は駅を出て行った。

象潟にて  2005-12
CanonEOS-1vHS EF70-200mmF2.8L USM  shutter=auto f2.8  RHPIII(+2)


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