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いつもの延長 今なおやっていることでもあるが、
遠方に撮影に赴くのに若い頃から普通列車の乗り継ぎをやっていた。 ふつうの人には旅先はなるべく速く、そして楽なほうがいいから、
新幹線や飛行機や在来線の特急を使うだろう。 かたや、安上がりだが時間はかかり安楽ではない、
「苦行」ともいえる普通列車の乗り継ぎ。 そのことを知人に尋ねられることもままあった。
大抵は多少なりとも怪訝そうに、
そして「私には無理」という主旨の発言も添えられて。 まあ。そうだろうと思う。 快適なシートや個室空間などではない、
普段利用する人々の日々の足としての列車だ。 たとえば東京から北へ向かえば、7時間かかってやっと仙台だ。
ふつうの人はやろうとは思わない。
特にお金のない若い頃に旅に出るならこうするしかなかった。 確かにそうなのだが、だがこの普通列車の乗り継ぎ旅は、
そんなに難しいものでもなかったりするものだ。 都会にいて日々使っている電車を、終点まで乗ってみる。
そして、そこから先があれば乗り換えてみる。 実はたったそれだけのことだったりする。
近頃では新幹線の延伸、そして一服したものの空港も開業が続き、 速く快適な旅がどんどん整備されてきている。 一方で贅を尽くした豪華列車の旅なんていうものも出現している。
そんな中で…貧乏旅の言い訳に聞こえるかもしれないが、
普通の電車に身を任せた乗り継ぎ旅も悪くはない。 いろんな土地をゆっくり辿り、それぞれの土地の匂いに触れる。
風土や文化が変化していくのを感じてゆく。 自分が今、旅をしているということを実感できるかもしれない。
東北本線車内より 2017年1月 |
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